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コラム

反社会的勢力との関係遮断〜いわゆるグレーゾーンの場合の対応

弁護士 澤田和也

 反社会的勢力との関係遮断に取り組んでおられる企業担当者の方から,いわゆるグレーゾーンの場合の対応が困難であるとの話を耳にします。

 ここでいうグレーゾーンとは,企業が契約関係にある相手方について,反社会的勢力ではないかと疑われるけれども,反社会的勢力であることを十分に証明することができず,反社会的勢力であると断定できない場合です。例えば,そもそも反社会的勢力の共生者や密接交際者,うわさがあるようだが客観的な証拠がない場合のように証拠資料がないタイプ,十年以上前の逮捕記事があるがそれ以降は全く情報がない場合のように古すぎる情報しかないタイプ等です。

 企業と取引がある相手方がグレーゾーンに分類される場合に,どんなリスクがあるのでしょうか。グレーゾーンの場合,一方で相手方が反社会的勢力であるとの十分な証拠資料もなく,関係遮断に踏み切るには反社会的勢力認定についてのリスクを伴います。他方で,関係遮断をしないまま,関係を継続して,後に反社会的勢力であることが明白になった場合には,関係があったことに対して,世間から厳しい批判を受けることになり,回復しがたいダメージを被るリスクがあります。こうしたことから,企業は,相手方がグレーゾーンに分類される場合,関係継続か関係遮断か,きわめてむずかしい判断を強いられるのです。

 最初に注意しなければならないのは,グレーゾーンが相当程度存在することを意識して区分けをすることです。グレーゾーンを意識的に設けることは,ブラックな場合(反社会的勢力であることが証拠資料により明白な場合)との間で明確に線引きするであり,ブラックな場合には即座に関係遮断に動かなければならないことを明確化することにつながります。ブラックな場合に,グレーゾーンが混在していることにより,優先順位を誤ったり,放置してしまったりするリスクが高まります。ブラックな場合についての的確な対応のためにも,グレーゾーンの設定を意識的に設けるようにしましょう。

では,グレーゾーンに対する対応はどうすればよいのでしょうか。はじめに,取引開始の局面では,ブラックはもちろん,グレーについても,取引を開始しないとの結論でよいでしょう。契約自由の原則が適用される場面です。 次に,取引関係にあって,関係遮断をしようという局面が問題となります。グレーゾーンに分類される相手方については,「継続的な監視」をし,「関係遮断のタイミングを逃さない」ことに尽きます。すなわち,相手方が反社会的勢力であるとの十分な証拠資料がないわけですから,安易な関係遮断に踏み切るべきではありません。しかし,そうであるからといって,漫然と取引を継続させるのは危険です。

 第一には「継続的な監視」をして,相手方が反社会的勢力にあたるとの新たな情報がないかアンテナを伸ばし,取引に関する相手方の行動を注視すべきでしょう。相手方が反社会的勢力であるとの十分な証拠資料が不足しているわけですから,情報の収集をやめないということです。

 第二に,関係遮断には,さまざまなツールがあります。反社会的勢力であることを理由にした契約の解除事由だけではないはずです。その他契約違反事由が発生した場合の契約解除のほか,契約期間の満了や中途解約条項等があります。こうしたツールを使うべく準備をします。注意を要するのは,「継続的な監視」といっても,だれが,どのような方法で行うのか,チェックはどうするのか,社内の明確な体制づくりをしておくことです。

 こうした「継続的な監視」によって準備が整ったら,第二に「関係遮断のタイミングを逃さない」ことです。無為にアクションを遅らせることは,漫然と取引を継続したとの厳しい評価を受ける結果となりかねません。迅速にアクションを起こしましょう。この点に関しての注意点は,法的に処理をすることです。訴訟沙汰になることを恐れず,むしろ積極的に訴訟等,法的な手続を利用することが重要だと考えます。

(2015年2月20日改訂)

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