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コラム

少数株主の排除について

弁護士 山内英人

 会社を経営していく上で、少数株主の排除の必要性を感じたことはありませんでしょうか。当事務所にも、支配株主である経営者が、株主管理コストの削減、意思決定の迅速化等を目的として、少数株主の排除を相談にこられることがあります。
 支配株主が、少数株主の有する株式の全部を、個別同意を得ること無く、対価を支払った上で取得することを、通常、キャッシュ・アウトと呼びますが、今回のコラムでは、このキャッシュ・アウト手法を簡単に紹介してみたいと思います。

 従前は、「全部取得条項付種類株式」(会社が株主に対価を支払い、株式を強制的に買い取れることの出来る株式とご理解下さい)が良く利用されていた手法です。定款変更により、既存株式を「全部取得条項付種類株式」に転換の上、会社がこれを強制的に取得する際に対価として支払う新株の交付比率を調整し、少数株主が受け取る新株を1株未満の端数とすることにより少数株主を排除する手法です(端数については、端数株式を売却し、代金を少数株主に交付します)。

 まず、「株式併合」という手法が考えられます。これは,株主総会決議の特別決議に基づき、数個の株式を併合し、少数の株式とすることにより、少数株主の所有株式を1株未満の端数とした上で、その端数を金銭精算してしまおうという手法です(100株を1株とする株式併合の場合、100株未満を所有する少数株主が金銭精算されることになります)。従前は余り用いられなかった手法でしたが、平成26年の会社法改正で制度改正が行われたことにより、使い勝手が高まったと言われており、今後は、「全部取得条項付種類株式」より「株式併合」が利用されていくケースが増加していくように思われます。

 他方、支配株主が単独で90%以上の議決権を有している場合には、平成26年の会社法改正で導入された「特別支配株主による株式等売渡請求制度」を利用することになろうかと思います。この手法を用いれば、90%以上の議決権を有する「特別支配株主」が、会社の取締会の承認を得た上で、少数株主に対して全株式を売り渡すように請求できることになります。これまで説明した2つの手法と異なり、株主総会決議が不要となるために、時間的・手続的コストが随分と軽減されることになりますし、1株未満の株式の端数処理を行う必要もなくなります。

 このように、少数株主を排除するためには幾つかの手法がありますが、それぞれ要件が異なりますし、排除される株主側が、差し止めを求めたり、株主総会決議の有効性や対価の妥当性を争ってきたりと対抗手段をとってくることも大いに予想されますので、具体的に実行していく場合には、必ず弁護士等の専門家と相談をする必要がありましょう。

以上

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