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コラム

マンションにおける民泊の問題2 −民泊差止めの仮処分−

弁護士 長森 亨

1. はじめに

 当事務所では平成28年12月に都内のマンション管理組合の依頼により,専有部分で民泊営業を行っていた区分所有者に対して民泊差止めの仮処分を申し立て,民泊の差止めを命じる決定を得ました。

 そこで,本コラムでは,マンションにおける民泊に対する対応のうち,民泊差止めの仮処分について説明したいと思います。

2. 民泊差止めの仮処分

 マンション内で民泊が行われ,理事会からの申入れや理事長による勧告等によっても民泊が継続する場合,対応方法の一つとして,裁判所に民泊の差止めを命じてもらうための法的手続を申し立てる方法があります。

 通常の民事訴訟として訴訟を提起する方法もありますが,民事訴訟は訴訟提起から判決の言渡しまで半年から1年程度かかる場合があり,現に民泊営業により生活上の問題が生じているような案件などでは,判決を待っていては法的手続の目的が達せられない場合があります。

 そうした場合に,仮の処分として民泊の差止めを命じてもらう手続が仮処分です。

3. 差止め請求の根拠

 民泊の差止めの訴訟や仮処分を求める方法として,区分所有法57条に基づく請求が一般的と思われます。

 これは,区分所有者が共同の利益に反する行為をしている場合にその行為の停止等を請求することができるというものです。

 民泊が共同の利益に反する行為といえるためには,民泊が管理規約違反であるといえることが重要です。民泊を明示的に禁止する管理規約の改正を行っていればよいですが,標準管理規約に準拠した「専ら住居の用に供する」との用途制限しかしていない場合には,規約違反の点を争われる可能性があります。この点については,コラム「マンションにおける民泊の問題」を参照して下さい。

 もっとも,管理規約違反かどうか争いがある場合でも,問題となる民泊が旅館業法の要件を満たさない違法な旅館業に該当する場合には,旅館業の無許可営業として共同の利益に反する行為に該当する可能性があります。

4. 総会決議

 区分所有法57条による法的手続を申し立てるためには総会の決議を得る必要があります(同条2項)。

 管理規約によっては,理事会決議によって提起することができるとしている場合もありますが,仮処分のための担保金支出のために総会決議を経ておいた方が良い場合があるので注意して下さい。

 仮処分は,通常訴訟の前に仮に差止めを命じてもらう手続であり,通常訴訟において差止めが認められない可能性もあるため,万一認められなかった場合に区分所有者が被る損害を担保するために裁判所が命じる担保金を納付する必要があります。

 通常このような担保金の予算措置は執られていないことが一般的ですので,仮処分の申し立てに際しては,こうした担保金の支出に関して決議を取っておいた方が良いでしょう。

 また,区分所有法57条による請求は,管理組合としてではなく,管理者又は総会で指名された区分所有者が他の区分所有者を代表して申し立てることになりますので(区分所有法57条3項),この点についても総会決議を得ておいた方が良いでしょう。

5. 仮処分の手続

 仮処分を申し立てると,原則として裁判所は民泊を行っている区分所有者を呼び出して審尋という手続を行い,反論の機会を与えた上で差止めを命じるかどうかの判断をします。

 差止めを命じる必要があると判断した場合には申立てをした債権者に一定の担保金の供託を命じ,供託がされたときは,差止めを命じる仮処分を発令します。裁判所が担保金の供託を指示してから納付するまでの期間は,通常1週間程度しか指定されませんので,速やかに納付ができるようあらかじめ出金の準備をしておく必要があります。

6. 間接強制

 民泊の差止めを命じる仮処分が発令されたにもかかわらず,区分所有者が民泊をやめない場合,差止めを強制的に実現するためには強制執行の申立てをする必要があります。強制執行にはいくつか種類がありますが,民泊の差止めの場合は間接強制という方法によります。

 間接強制とは,裁判所が民泊を行っている区分所有者に対して,民泊を行った場合には一定の金員(間接強制金)を支払うことを命じることによって心理的な圧迫を与え,これによって民泊差止めの実現を図る手続です。「民泊を行ったときは1日あたり○万円を支払え」という趣旨の決定の発令を求めることになります。

 それでもなお民泊をやめない場合は,発生した間接強制金について,財産の差押え等の強制執行を求めていくことになります。

7. 最後に

 このように,民泊差止めの仮処分も,総会の実施から,仮処分の手続,間接強制の手続まで経ると,実際に民泊差止めの結果が得られるまでそれなりの期間が必要になります。

 また,実際には,マンションの規模や管理規約の内容,民泊の実施状況や生じている問題の内容によって対応の方法は変わりうることから,法的手続によることを検討する場合は早めに弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

以上

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