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コラム

民法(家族法制)等の改正B
〜父母以外の親族と子との交流(令和8年4月1日施行)〜

弁護士 長森 亨

 令和6年5月17日に成立した令和6年法律33号の民法の改正により、これまで子との交流は父母と子との親子交流に関する規定しかありませんでしたが、新たに父母以外の親族と子との交流に関する規定が新設されました。これに伴い、父母以外の親族も一定の要件を満たせば、子との交流に関して裁判所に相当な処分を求める申立てをすることができることになりました。

 本コラムでは、どのような場合に父母以外の親族が子との交流に関する申立てができるのかといった制度の枠組みを簡単にご紹介したいと思います。

 なお、この改正法は、令和8年4月1日から施行されています。

1. 父母以外の親族と子との交流に関する規定の新設

 改正前民法には父母以外の親族と子との交流に関する明文の規定がなく、父母以外の親族(特に祖父母)が子(孫)との交流を求めて、子を監護する父母に対して子との交流を求める申立てができるかについては争いがありましたが、最高裁判例(最一小決令和3年3月29日裁判集民265号113頁)が否定説に立つことを明らかにしたことから、同判例以降は立法によって解決されるべき問題と考えられていました。

 この問題については、例えば、子が長年にわたって祖父母等と同居し、両者の間に親密な関係が形成されていたような場面を想定したときには、父母の離婚後も、引き続き子と祖父母等との交流を継続することが子の利益の観点から重要であるとの指摘や、事案によっては、そのような祖父母等の親族が、自ら子との交流に関する審判の申立をすることができなければ、子の利益を害する場合があるとの指摘がある一方で、父母以外の親族に対して子との交流の申立権を無制限に認めることに対しては、潜在的な紛争当事者が増加することで、子が多数の紛争に巻き込まれ、結果的に子の利益を害することになりかねないとの指摘もされていました。

 そこで、改正法では、民法766条の2を新設して、一定の要件を満たす場合には、家庭裁判所が父母の離婚後における父母以外の親族と子との交流について定めることができること、父母以外の親族が子との交流に関する審判の申立てができることとしています。また、父母の婚姻中における父母以外の親族と子との交流についても、民法の「第4編 親族」の中の「第3章 親子」の中に新たに「第3節 親の責務等」を設け、その中に新設された民法817条の13において、同様の規律を設けています。

2. 申立権者と申立ての要件

(1)申立権者と申立ての要件

 子の監護に関する事項は第一次的には父母の協議により定めることが想定されており(民766条1項)、父母以外の親族と子との交流を求める調停・審判の申立権者も原則的には子の父母とされています(民766条の2第2項1号、民817条の13第2項)。

 しかし、父母の一方の死亡や行方不明等の事情によって父母の協議や父母による申立てが期待しがたい場合があることから、このような場合に対応する必要がある範囲で、父母以外の親族による申立てを認めることが相当と考えられます。

 そこで、父母以外の親族が当該親族と子との交流を求める調停・審判を申し立てるためには、当該親族と子との交流についての定めをするために「他に適当な方法がないとき」という要件(補充性の要件)を定めています。

 さらに、父母以外の親族といってもその範囲は広範ですが、父母以外の親族と子との交流が認められたのは、当該親族と子との間に親密な関係が形成されていた場合には、父母の離婚又は別居後も当該親族と子との交流を継続することが子の利益の観点から重要であるからであり、また、広範に申立権を認めることは、潜在的な紛争当事者が増加することで子が多数の紛争に巻き込まれ、かえって子の利益を害するおそれがあります。

 そこで、改正法は、父母以外の親族を、子との間に親密な関係が形成される素地があるといえる一定の範囲の近親者(直系尊属及び兄弟姉妹)とそれ以外の親族に分け、後者については、「過去に当該子を監護していた者に限る」という要件(監護実績の要件)を定めています。

 以上の結果、父母以外の親族との交流の申立権者と申立ての要件は以下のように整理できます。

【申立権者と申立要件】

申立権者 申立要件 条文
父母 なし 766条の2第2項1号
817条の13第2項
父母以外の子の親族 子の直系尊属
(祖父母)
補充性の要件 766条の2第2項2号
817条の13第5項
子の兄弟姉妹 補充性の要件
その他の親族
(おじ、おば)
補充性の要件
監護実績の要件

(2)補充性の要件

 父母以外の親族が申立人として家庭裁判所に子との交流を求める調停・審判を申し立てるためには、申立人が子の直系尊属か、兄弟姉妹か、それ以外の親族かにかかわらず、「他に適当な方法がないとき」という補充性の要件を満たすことが必要となります(民722条の2第2項柱書、817条の13第5項ただし書)。

 補充性の要件を満たすのは、父母の一方の死亡や行方不明等の事情によって父母間の協議や父母による申立てが期待しがたい場合に限られると解されています。

(3)監護実績の要件

 子の直系尊属及び子の兄弟姉妹以外の親族が申立人として家庭裁判所に子との交流を求める調停・審判を申し立てるためには、補充性の要件に加えて、「過去に当該子を監護していた者に限る」という監護実績の要件が必要とされています(民722条の2第2項2号、817条の13第5甲括弧書)。

 「過去に当該子を監護していた者」といえるためには、当該親族の監護実績が、子と生活の本拠を共にしていたなど、子と当該親族との間に愛着関係が形成される素地を認め得るものである必要があり、また、客観的に見て愛着関係を形成できる程度の期間にわたる監護実績が必要になると考えられています 。

(4)適法要件を欠く申立て

 補充性の要件や監護実績の要件は、申立てが適法であるための要件であることから、これらの要件を欠く申立ては、調停、審判のいずれについても、その申立てが不適法なものとして却下されることになります(家事法67条1項、255条3項)。

 なお、父母以外の親族が子との交流の調停・審判を申し立てた場合において、申し立てた段階で、当該申立てが適法要件を欠いて不適法であるときは、家庭裁判所は相手方に申立書の写しを送付することなく、当該申立てを却下することができると考えられます(家事法67条1項、256条1項)。

3. 父母以外の親族と子との交流を定めるための要件

 以上のように、父母以外の親族が子との交流を求める調停・審判の申立てをするためには、一定の要件が必要とされていますが、さらに裁判所が審判で父母以外の親族と子との交流を実施する旨を定めることができるのは、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」に限るとして、改正法は父母以外の親族と子との交流の実施を定めるための実体的要件を設けています(民766条の2第1条、民817条の13第4項)。

 子の監護についての必要な事項は父母の協議により定めることができるとされており(民766条1項)、父母の協議により父母以外の親族と子との交流について定めることは可能であり、実体的要件も必要ありません。

 しかし、家庭裁判所が審判でこれを定めるのは父母の協議が調わない場合であり、典型的には子との交流を求める親族と相手方となる父母の一方との間に意見対立がある場合が想定されます。このような場合に、少なくとも父母の一方の意思に反してでも家庭裁判所が子と父母以外の親族との交流を実施する旨を定めることが相当であるといえるのは、例えば、子と当該親族との間に親子関係に準じた親密な関係が形成されるなどして、子の利益のために特に交流を認める必要性が高い場合に限られると考えられるため、このような実体的要件が設けられています。

 したがって、「子の利益のため特に必要がある」といえるためには、例えば、父母以外の親族が相当期間子と同居して監護に関わっていたことを受けて、子も積極的に当該親族との交流を希望している場合になど、当該親族と子との間に親子関係に準ずるような親密な関係性(深い愛着関係)があることが必要と考えられます。

4. まとめ

 このように父母以外の親族と子との交流については、父母以外の親族が申し立てる場合には、その範囲に応じた申立ての要件が定められているほか、さらに裁判所が審判でこれを定めるためには「子の利益のため特に必要がある」という実体的要件も定められています。

 改正法によって新しい規律ができたから誰でも申立てが可能になったわけではありませんので注意が必要です。また、子との交流はあくまで子の最善の利益のために行われるべきものであり、基本的には子の父母との協議によって合意により定めることが望ましいと考えられますので、このような手続の申立ての要否、可否については慎重に検討する必要があると思われます。

以上

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